「貧困女子」という言葉が、この数年間でまことしやかに囁かれるようになりました。
読んで字の通り、貧困に苦しむ女性たちのことを指しています。
検索をかけると、様々な体験談やコラムと共に、その苦しい生活について語られた記事が見つかります。
独身女性だけでなく、シングルマザーの貧困も顕著に現れています。
こうした貧困格差について、日本ではあまり表立って口に出すことができません。
「みっともない」
「恥ずかしい、情けない」
「誰にも頼れない」
こうした現状が、貧困女子を更に困窮させている原因のひとつと言えます。
ここではそんな「貧困女子」について、特徴やさらなる原因、解決策を考えていきましょう。
貧困女子とはどんな女性のことを指す?年収114万円以下はどこから来たのか
まずは「貧困女子」の定義について考えてみましょう。
多くのサイトでは「年収114万円以下の独身女性」が貧困女子である、と定義づけられています。
これは月収にすると10万円以下、一人暮らしをするにはかなり厳しいと言えるでしょう。
では、この「年収114万円以下」というのはどこから来たものなのでしょうか。
当たり前のように定義されていますが、情報源はどこにあるのでしょう。
2014年(平成26年)1月の記事を見てみると、「働く世代の1/3が年収114万円以下である」という記述があります。
どうやら当時のテレビ放送「クローズアップ現代+」にて、次のような発言があったようです。
「若い女性の多くは正規雇用で働くことを希望しています。しかし、現実は若い単身女性3分の1、110万人が年収114万円未満の貧困層と見られます。この背景には、若い女性は結婚すれば家庭に入るという考え方が、世間にも本人にも色濃く残り、若い女性たちの貧困問題を見えにくくしています」
さらにこのデータの元となった平成22年度版の男女共同参画白書」によると、勤労世代(20歳~64歳)の女性の貧困率は以下の通り。
単身世帯 |
約30% |
母子世帯 |
約60% |
世代別・世帯類型別相対的貧困率(平成19年版)
ということで、「年収114万円以下の単身女性が貧困女子」というのは、かなり古い情報に則ったものであることがわかりました。
参考:https://www.j-cast.com/tv/2014/01/28195269.html?p=all
参考:http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h22/gaiyou/pdf/gaiyou.pdf
では、2018年現在でもそれは変わらないのでしょうか。
厚生労働省の発表した「平成28年国民生活基礎調査」によると、母子世帯の貧困が目に見えてわかります。
参考:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf
母子世帯 |
|
年間所得平均 |
270万3千円 |
貯蓄が「ない」と答えた世帯 |
37.6% |
借入金が「ある」と答えた世帯 |
28.1% |
※平成26年度の調査には母子世帯の年間所得項目がありませんでした。
ちなみに平成27年度の調査の「賃金階級、性、年齢階級別労働者数割合」によると、女性の年収の割合は…
年収 |
割合平均 |
~99万円 |
0.2% |
100万円~119.9万円 |
1.3% |
120万円~139.9万円 |
4.8% |
140万円~159.9万円 |
9.0% |
参考:http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2015/dl/13.pdf
とあり、「働いている女性の1.3%」が年収114万円前後に当てはまる、という情報が得られました。
クローズアップ現代+では特に「若い単身女性」に焦点を当てているため、このページでも同様に「若い女性の貧困」について触れていきましょう。
貧困女子の特徴と原因。どうして女性は貧困に陥ってしまうのか
ネットで検索してみると、貧困女子の惨憺たる様相が目の当たりにできます。
例えば「毎日シャンプーができない」「1日の食事は数百円」「貯金はもちろんゼロ」…といったもの。
しかしこれらに当てはまらないからといって、貧困女子でないわけでもありませんよね。
ここでは貧困女子になってしまう特徴と原因を確認していきます。
病気・怪我で働けない
貧困女子に陥ってしまう第一の要因は、やはり心身的な不調です。
うつ病をはじめとする心の病がたたり、勤続できなくなった結果、収入が途絶えてしまうことは少なくありません。
治るタイミングが掴みかねない以上、長期的な休養にはそれなりの貯蓄も必要です。
結局「短い時間で高収入が得られる職」が優先され、正規雇用を逃してしまいます。
母子家庭・介護など家庭の課題
また病気だけでなく、介護などの家庭内の事情も深刻な課題です。
働きながら介護を行うともなれば、24時間ずっと働いているのと同じこと。
給付金制度はありますが、手続きが煩雑なこともあって、なかなか利用拡大に至らないようです。
→介護休業給付金の条件。イラストで支給金額や申請方法を解説します!
労働と介護、そして家事の両立は、本人にとってとてつもない負担です。
結果として病気を招き、自身も働けなくなり、貧困に陥るケースもあります。
正社員雇用ではないこと
上記2つに関連して、非正規雇用の割合が多いことも重大な問題です。
厚生労働省の調査では、女性の正社員・それ以外の賃金の差は以下の通りです。
雇用形態 |
賃金 |
正社員 |
298万7千円 |
それ以外(非正規雇用) |
197万7千円 |
およそ100万円もの差がついていることがわかります。
短期バイトなどで手軽に稼げるようになったものの、非正規雇用の賃金はなかなか上がりません。
体の不調からなかなか正社員になれない、という方も少なくないようです。
借金・奨学金の返済
非正規雇用が多いということは、それだけ日々の生活における固定費の負担が大きいということ。
借金や奨学金の返済など、生活費以外の後回しにしてしまいがちなお金が、生活をさらに困窮させていきます。
特にクレジットカードの支払いに関して、返済が間に合わず借入をしてしまうというケースが多いです。
インスタ映えを狙う
「なんでここでインスタ?」と思うかもしれませんね。
昨今の女性には欠かせなくなったSNSですが、「インスタ映え」を狙いすぎる女性も多いもの。
インスタ映えを狙うとなると、当然必要になるのが可愛い被写体です。
食べ物や衣服、化粧品や動物など、インスタで流行することを狙うためだけにお金を使ってしまう女性。
こうしたSNS没入も貧困女子の原因の一端を握っているのかもしれません。
自分に自信がない
「お金がない」というステータスは、自分磨きにも、周囲にも大きな影響を与えます。
周囲と金銭感覚がズレてしまうことが多く、自信を失ってしまうケースがあります。
また真面目な人ほど「あれもできてない、これもできてない」と考え過ぎ、大きなストレスを抱えてしまいます。
誰かと比べて劣っている、という無自覚な劣等感は、やがて周囲にも伝播していきます。
結果として「独身」「頼れる人がいない」「家族も頼れない」という貧困に陥ってしまうのです。
貧困女子を脱出するにはどんな対策がある?アルバイトから正規雇用へ
それでは、こうした貧困女子を脱するにはどうすればいいのでしょうか。
本当の本当に生活が厳しいときには、状況に応じた機関に相談することも重要です。
→2018年版国からもらえる給付金まとめ。低所得者、求職者等を支える
貧困を脱するためには、まずはお金と向き合うこと
向き合う、というのは、「お金を好きになる」とかそういう話ではありません。
今までどんな風にお金を使ってきたか、どんなことにお金を使ったか、今一度考えてみましょう。
貧困を脱するのはそう簡単な話ではないし、すでにギリギリの生活をしている方もいるでしょう。
でも、だからといって本来不必要なものにお金を使い、必要なものに使わないのは人生における不利益です。
例えば現代社会ではスマホが必須ですが、キャリアではなく、格安SIMを使っているでしょうか。
調査によると、格安SIMスマホに変更しているのは高所得者の方が多いそうです。
低所得の方は「手間だから」「時間がないから」と言って、高いプランのまま固定費削減ができず、結果として月々の支払いが高額になっているケースがあります。
こうした「ちょっと手間だけど、すぐに取り掛かれること」は、身近なところにたくさんあります。
お金がないから、という前に、もう一度だけ「必要なもの」を振り返ってみてください。
貯蓄?自己投資?本当にお金をかけるべきところを見極める
「貧困だから貯蓄ゼロは当たり前!」という文面を見て、当然だと思うでしょうか。
とある記事では、「貯蓄は200万円あるけど、切り詰めた生活を送っている」という文面があります。
日本における貧困は目に見えるものではなく、地域によって差のある相対的なものです。
そのため「○○だから貧困!」という基準が曖昧で、ついつい批判的に見てしまう傾向にあります。
しかし、根本的に貧困から脱却するためには「貯蓄」、さらに「自己投資」は絶対に必要です。
今以上の環境で働くため、資格勉強をしながらお金を貯めている方までもを「貧困なのに」と批判していたらキリがありません。
「どこにお金をかけ」「毎月どのくらいお金を貯める」のか、このバランスが必要不可欠です。
周囲の目や意見は気にせず、ファイナンシャルプランナーの無料相談など、専門家を頼ることも視野に入れてください。
まとめ:貧困女子の脱出はすぐにはできない。解決にはプロの意見も取り入れよう
一度貧困に陥ると、なかなか自分ひとりの力だけでは解決には至ることができません。
長く苦しい道のりかもしれませんが、計画的なお金の管理が大前提となります。
面倒くさいことや、手間に感じるようなことはできるだけ先にやってしまいましょう。
本当にどうしようもない時は、無料相談や役場窓口での相談を活用してください。
また生活保護の相談に行く場合は、知人や弁護士などに連れ添ってもらい、決してひとりでは赴かないよう注意しましょう。